この物語の良さをどう表したらいいのかと、好きになりすぎて寝かすことしばらく。
言うなれば、滋味。
この目立ちはしないけれど味わいのある装丁のように、
筆力の確かさによる匂い立つような生活の空気や登場人物の確かに生きてる感じ。
地味だけど、深い味わいがあって、栄養のあるスープみたいに身体に残るのです。
舞台は戦後の、焼け野原になった東京の、復興していくその時。
生き残った人間がそれぞれの事情を抱えつつ、浅草の劇場で働き暮らしはじめます。
夢を持って東京にやってきた旅の漫才芸人や、一癖二癖もある復員兵。
空襲で家族をなくした11歳の子供。わけありのショーダンサー。
みんないろいろあって、望む望まないを選ばず戦争では生き残ってしまって、
くよくよしたりしながら、生きています。
清濁ごちゃごちゃの、理不尽も不正義もあるその生活のなかにある、
揺るぎながらも折れないまっとうさがこの物語の魅力。
特に、この物語の時代にすでに古き良き漫才芸人になってしまっている、
心優しき善造の、方言で語られることばのなんと力強いこと。
書きだしたくなる名言が随所にあります。
そう、この物語はとにかく名文名言がたくさん。
漫画の決め台詞みたいに太文字でズバッとでてくるんじゃなくて、その場面のなかではごく自然にある、
心の方位磁針のような言葉を、じっくり味わってみてください。
2013年1月27日更新
『笑い三年、泣き三月。』 木内昇
ただいま 54 ストック!
こんにちは、鳩です。
食べること寝ることに並んで本を読むことが大好きで、ついにはお仕事まで本に関わることをしています。ここはわたしが読んだ本ばかりの個人的な書庫でもありますが、あなたにおすすめしたい本を差し出す本屋さんのカウンターでもあります。読んで好きになった本、印象に残った本、私はあまりなじめなかったけれどおすすめしたい誰かの顔が浮かんだような本を集めています。記事から記事へキーワードをたどってめぐることもできますし、表示される記事やキーワードもそのときにより変化します。気になる言葉や名前などを各記事下の検索欄で探していただくこともできます。
いまはまだ少ないこの書庫の蔵書も、うっそうとした本の森にそだつ予定です。どうぞ気ままにお散歩して、本と出会ってくださいな。
ほんとうの話 酔う フェア帯 文章読本 児童書 学校 日本の物語 コミック ファンタジー 知識と実践 歴史小説 食べる 歴史を知る 絵本 新書 本のおしごと 震災後 女 詩 恋と愛のはなし 児童文学 受賞作 ブックガイド どうぶつ エッセイ 家族 海外の物語 こどもの世界 副読本 音楽 仕事場
自転車 新潮社 塚本やすし 木内昇 岸本佐知子 挿絵 産経児童出版文化賞 妄想 夜 科学 絵本大賞 中島たい子 東京 偕成社 貪欲 希望 こやまけいこ 喪失 お菓子 汐文社 食育 芳文社 言葉 大修館書店 赤木かん子 戦争 徳間書店 中央公論新社 パトリック・ネス リズム 図書館 筑摩書房 瀬名秀明 角川GP 小国綾子 新聞 翻訳 講談社 シヴォーン・ダウド 虐待 朝日新聞出版 冒険 飯塚有紀子 集英社 漢方 本屋 ラジオ ポプラ社 白水社 レシピ イギリス 川上弘美 浅草 あすなろ書房 荒井良二 直木賞 朝 文藝春秋 苦楽堂 発見
http://pigeon-book.com/