DSC05554
室町幕府第十三代征夷大将軍、足利義輝の生き様を描いた歴史小説です。
わたしはこの本を読むまで義輝という存在をよく知らなかったのですが、その描かれる人物と人生のかっこいいこと!大河ドラマで主人公に取り上げられていてもいい人物なんじゃないかと思ってしまいました。

義輝の生きた時代は、室町幕府の末期。足利将軍家の権威は失われて、お飾り的なイメージの強い将軍のなかで、武人として自分の力で未来を切り開こうとした存在として描かれます。
なによりも惹きつけられるのはそのひととなり。義輝に仕える多くの人に「大器」と感じさせる、男も惚れる男。武芸だけでなく、屈折しない健やかな心を持ち義と情に厚く、為政者としての胆力も持ち合わせていて、戦国時代になお残す武将たちに「この男ならもしや」と思わせる魅力にあふれています。そして義輝に惚れた多くの男たちの生き様にもまた、魅せられます。

読むにつれてどんどん義輝に惚れ込んで、思い入れが強くなっていくのですが、この物語は基本史実に沿ってすすんでいきます。つまり、結末も史実を裏切ることはない。どんなに義輝が魅力的でも時代が変わらないことは、わかっています。たどり着く未来がわかっているのに、上中下、全3巻の長い物語を一気読み。下巻ではもう、泣きそうになりながら、生きて欲しい生き続けて欲しいと祈りながら読みました。ミステリーのどんでん返しのような意外なストーリー展開はないとわかっていて、それでもこんなに夢中になって読んでしまう歴史小説の面白さをここまで感じたのは初めてかもしれません。

バッサバッサと斬り合うようなちゃんばら小説は普段好んで読まないのですが、この物語に描かれる闘い、とくに義輝最後の闘いはほんとうにかっこいい。足利義輝が現代に剣豪将軍と呼ばれるようになった由来である、見事な死に様です。剣豪ものが好きな人、名刀が好きな人は是非読んでみて欲しいです。

この本を読んだあと、義輝について書かれている本がほとんどないので、もっと知りたい欲にしばらく苛まれました。もちろん私が惚れ込んだのは、この本の著者宮本昌孝さんが描いた義輝像であって、歴史上その人がどういう人物だったのかはわからないのですが、そのぐらいにのめり込める面白さだったということで。歴史に興味ない人、時代小説に興味のない人にも強くおすすめしたいです。


pigeon bookstock RSS2.0 Feed on Feedburner


2014年10月19日更新
『剣豪将軍義輝』 宮本昌孝

日本の物語 歴史を知る 歴史小説