山梨の勝沼へワイナリーめぐりに行ったことがあります。
あれこれ試飲したりお話を伺ったりするのは楽しく、日本のワインも美味しい!そして気軽に楽しめるお値段でも美味しいものがあるんだ!と思いました。
今でこそあちらこちらに国産メインのワインバーができたりして、評価も上がっている国産ワイン。
けれどそこに至るまでの道のりは、平坦ではなく。

これを読むとかつての日本のワインがどんなものであったのか、よくわかります。
日本では「ワイン用葡萄の栽培に向かない」といわれ、葡萄は生食用のもの、他輸入しやすい葡萄ジュースなどを原料としていました。
ワイナリーが葡萄を栽培して、ワインを醸造するという流れはまったく一般的なものではなかったのです。
この「ウスケボーイズ」はワインの美味しさを決定づけるものが醸造の技術ではなくぶどうであり、ワインづくりは農業なんだと感じた若者たちが、自分でぶどうを栽培し、理想とするワインをつくろうとする、その数年を追ったノンフィクション。
葡萄にワインに執着し、狂っているとも思われるような生き様が描かれています。

この本を読んだからといって、今飲んでいるワインの味が変化するわけではないのですが
旅先で見た、収穫の終えたあとの寂しくなった葡萄畑を思い出します。
勝沼には本当に葡萄畑がたくさんあって、でもそのほとんどは「ぶどう狩り歓迎」なんて看板がついた生食用の葡萄のもの。
立ち寄ったワイナリーにも、葡萄畑があるところ、ないところがありました。
この本を読む前はただの風景でしかなかったその葡萄畑に、違う興味、違う視点が生まれてくるようでした。

この本が出版されてもう数年。けれどきっとワインづくりの模索は、現在進行形。多分終わりはありません。
わたしはワインは好きですが、高級ワインやあれこれのうんちくや評価なんかは日常の外。
自分の舌で味わったものが美味しいかどうか、それが全てです。
でも世界のワインと一緒に日本のワインをそんなふうに楽しめること、そんな日常が今の世の中にあるのはここまで国産ワインを育ててきた人たちのちから。
そして今ワインを買い、飲むことのできる私たちも、さらにもっとおいしいワインを育てていく力の一つになるのだろうな、と思います。

日本のワインももっと楽しみたいな。
それが美味しくても美味しくないときでも。文句をつけながら、飲んで浮かれて。


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2013年2月11日更新
『ウスケボーイズ 日本ワインの革命児たち』 河合香織

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