小さい頃、本屋さんは少し離れた勾配のきつい坂の上にあって、自転車でいつも立ち漕ぎしながら通った。
特に大きいわけでもなく、「本」の看板だけが目立っていて名前も覚えていないお店。
この本のページをめくりながら、懐かしい本屋を思い出しました。

この『本屋図鑑』は、四七都道府県、すべての県の本屋さんが載っています。
すごく大きかったり、おしゃれだったり、品揃えが特化していたり…という本屋さんは、よく雑誌の特集などでも取り上げられるけれど、この本に収まっているのはそういうお店ばかりではなく、多くはわたしたちが普段「地元の本屋」として使っている町の本屋さんです。
図鑑という名にふさわしく色々なタイプの本屋さんを紹介していて、最南端最北端、病院のなか、大学のなか、といった立地ごとに選ばれていたり、本屋さんのなかのジャンルごとにフォーカスして紹介していたり。
学習参考書や旅行ガイドコーナーなどの、日常のなかで良く利用されていながらもあまり話題に取り上げられることのないような部分も含めて、本屋さんの内部をまんべんなくじっくり説明しているので、本屋さんってこんなふうになっていたんだなあと改めて感じる人も多いかもしれません。
お店の紹介には写真は使われておらず、すべてイラスト。実際にお店に行って撮影された写真から書き起こされたイラストは、実際に本を選んでいる人の姿や、棚に並ぶ本の背表紙まで詳細に描いていて、写真以上にそのお店の空気が伝わってきます。

この本はこれを見て、この本屋さんに行ってみたいなあと思える本屋ガイドでもあるのですが、それ以上にここには載っていないけれど自分がかつて通った本屋や、今よく行く地元の本屋を思い出しました。
子どものころ通っていた本屋さんはけして品揃えがよいわけではなかったと思うけれど、子どもがひとり自力で行けて自分で選べる本の世界はそれが全てで、そのなかから買った本が自分の読書傾向をつくりました。
わたしを本好きにして読む習慣をつけてくれたのは親かもしれないけれど、自分の好きな本を選ぶ力を育ててくれたのは近所の本屋さんだったなと思うのです。
ノスタルジーかもしれないけれど、もちろん大きくて品揃えの豊富な本屋さんも好きなのだけれど、身近にあってふらりといけて、いろんなジャンルをすこしづつ選んで置いている町の本屋さんがやっぱり好きだなあと思います。

まだまだ全国にちゃんとある、いろんなひとにとっての自分の町の本屋さんの良さが、この本を読んだ人にはきっと伝わるのではないかと思える、本好き本屋好き以外の人にも手にとって欲しい本です。


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2013年7月28日更新
『本屋図鑑』 本屋図鑑編集部

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