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これは芥川賞作家の村田喜代子さんによる文章レッスン。
実際に大学で行われた文章講座を書籍化したものになります。
暴れ馬を乗りこなすみたいに言葉を自分のおもうがままに使いこなせたらいいのに…なんて、書く行為を好むひとだけでなく、人と会話するときなどにも思う人は多いのではないでしょうか?
この本はもちろん書くことを前提にしたものだけれど、それだけでなく豊かな言葉を手に入れられそうな魅力的なレッスンになっています。

こういうふうに書けばというような文章技術のはなしもあるのだけれど、 
ここで行われるのはまず、読むこと。そうしてそれから書くこと。
比重は読むことのほうが重いのです。
なのでテキストとして多くの文章が引用されているのですが、その文章の面白いこと!
その文の力なのか、取り上げ方が上手いのか、とにかくもっと読みたくなるものばかり。
ブックガイドといってもいいのではないかと思うくらい追いかけて読みたいものが増えました。
小学生の作文から、一枚の版画をテーマに学生に書かせた短文、有名作家の小説、文芸に留まらないさまざまな文章まで。
特に面白くて読みたいなあと思ったものは草思社の『2000年間で最大の発明は何か』。
インターネットを通じて識者にもとめたアンケートをまとめたものなのですが、集まったものから公表されるものだったので、みんな前の人達とかぶらないようあれこれ機知を巡らした回答を寄せていて面白いのです。
多くの例文をあげながら、著者がくりかえしいうのは、様々な文章を読めということ。
例えば文学作品だけを読んで文章を上達しようとするのは、カルシウムだけをとって大人になろうとするのと同じこと。
そもそも文章というものは、人の心の動きによって生まれて思念によってまとめられるものなのだから、書き方なんていうのは人の数だけあるもので、こう書けば名文というような正解はない。
「文章の作り方」はつまりは「物事の考え方」であって、良いものに触れて、知って、感じて、考えて、取捨選択をして…そうやって探り探り自分の方法を身につけていくしかないということなのです。

まったく難しい文章は書かれていないのに、とても多くのことを得られるように差し出してくれている。
読んだだけで「文章を書くための自分」がふるふると殻の中からひびをいれて生まれてくるような、そんなレッスンでした。


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2013年2月2日更新
『縦横無尽の文章レッスン』 村田喜代子

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