ブックディレクターとして活躍する幅允孝さんの本です。
これは千里リハビリテーション病院という、脳や脊髄を損傷した方のための病院に設置された、
「リハビリに効く本」の本棚から生まれた本のガイドブック。

選ばれている本そのものも興味深いのですが
面白いのはその視点。
リハビリというと、「手をうごかす」「声に出して読む」というような様々な取り組みがあるのですが
数えるリハビリに、数を数えることをテーマにした写真集を。
手を動かしたり、日常生活を回想したりするために洒落たマナーブックを。
一見教材としてイメージしないような本たちを、役に立つ、使うための本として集めているのです。

物語を書いたり、本を創り上げたりするときは、様々な思いをこめているでしょうが
生まれでた本は、制作者の手を離れて、一人歩きをはじめます。
どんなふうに読むか、見るかは、読み手の自由。
本の中での幅さんの言葉ですが
「本はどんな病気でも治してしまうような魔法の万能薬でも決してありません。
 だけど本の魅力はひとつは、その余白だと思っています。あなたの接し方、使い方によっては、
 どんなことでも起こりうる。そんなまっさらの可能性だけは、他のメディアよりもここで
 紹介される紙束に印刷された情報の方がうんと備えているのではないかと僕は思うのです。」
私は今、身体のハビリを必要とはしていないけれど
固くなった頭をぎゅうぎゅうとほぐすリハビリをうけたような。
もっともっと本の世界から広がっていける、もっと楽しくなれる、閉ざされていない本の世界を感じました。

本が好きだけれど、本の中に閉じこもってばかりじゃつまらない!
あるいは、あまり本に興味はないけれど、楽しくなっちゃう!
どんなひとでも、知らなかった何かに出会える、まったく新しいブックガイドなのです。


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2013年2月14日更新
『つかう本』 幅允孝

ブックガイド 本のおしごと 知識と実践