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「病名は「色々なところが弱い」というあなただけの病気です」

主人公がどこの病院でも原因不明だった体調不良について、漢方医からくだされた診断。
この台詞にぐっと興味をひかれてしまうひとは、実は多いんじゃないかと思うのです。
30代くらいから、ぐっと不安定になる身体。
疲れがとれにくくなるだけでなく、原因のわからないまま続く微不調に悩まされることもしばしば。そういうときは気持ちも沈んで、心の不調に身体が引きずられているのか、身体が不調だから情緒不安定になるのか、わからなかったり。無理のきいた若いころのように、やる気や気合だけでは心と身体を機嫌よく保てないことに気付いてくるころです。

この物語の主人公は31才の女性。
元彼の結婚の報をうけてから原因不明の体調不良におそわれるようになります。
「ストレス」以外の原因も見つからぬまま病院をまわり、行き着いた先は漢方診療所。
前述の奇妙な診断を受けてはじまる漢方とのお付き合いをきっかけに
ままならない自分と付き合うバランスを見つけていきます。

ゆるやかな空気のあるこの物語自体が、漢方のようなじわじわ効く効果を持っているよう。
漢方の考え方や知識についての説明もでてくるので、実際に漢方に興味を持っている人にもおすすめな内容です。

西洋医学を拒んで東洋医学に頼る、ということではなくて
物語の重要な鍵になるのは、東洋医学の「受け入れる」考え方。
ついつい頑張って自分と戦ってしまいがちな生活を変える、きっかけになるかも知れません。


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2014年11月9日更新
『漢方小説』 中島たい子

日本の物語 知識と実践