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どんな物事にも、それを仕事としている、普段はあまり外からは見えない、なかで働く人がいます。
これは毎日新聞社で記者として働く小国綾子さんが、新聞社で働くようになった経緯から、一度会社をやめて再び同じ新聞社に再就職した現在までを書いた本。
児童書として出版されていますが、大人が読んでも面白い、むしろ大人が読んだほうが感じるところの多い内容だと思います。新聞に興味がなくても、働き方や生き方、言葉について考える事がある人におすすめしたいです。

世界を旅していた学生時代、どこの土地でも傍観者でしかないことに不満を感じて、「当事者になりたい」と日本で仕事を探し始めたこと。運良く新聞社に入社して記者になったものの結局当事者にはなれないと感じて悩んだこと。子どもが生まれて、それまでのようには働けなくなったときのこと。震災の後、言葉に迷うことが増えたこと。
小国さんの言葉は、すごく素直で、迷いも喜びも心にまっすぐ飛び込んできます。
言葉の力をあきらめず、自分だからできること、できないからこそできることを探していく著者の思いは、新聞記者でなくても多くの働く人に通じるところのあるものだと思います。
印象に残ったのは、若い頃よりも迷うことが増えたというところ。大人になったらいろんなことをかんたんに決められるようになると思っていたのに、実は違って、年を重ねれば重ねるほど、物事を深く見れば見るほど、迷いは増えていく。それが自分で考えるということだから…。
震災後の書くことへの迷いについて、作家や詩人にインタビューしている部分は特に胸に染みました。

この本には『新聞は、あなたと世界をつなぐ窓』という姉妹本も発売されていて、そちらは子どもにむけて世界を知る一つの手段としての新聞の役割や関わりかたを紹介しています。『?が!に変わるとき』とはまったく違う性格の新聞記者さんが書いているのもまた面白いのですが、どちらの本も、黒と白かというような2つに世界を分けることなく、さまざまな色の世界を橋渡しをしていきたいという気持ちが伝わってくるのは共通しています。
この本のタイトルがとても素敵だと思うので、そのことについて書かれたまえがきの部分を最後に一部ご紹介。

ーー問いは何だっていい。できれば単純な方がいい。どうしても知りたいと思うものがいい。
疑問符を胸に抱き、謎を解いてくれそうな人に会いに行く。その人の話に耳を傾け、もっと深く知りたくなり、更に質問を重ねる。
すると、心の中の<疑問符>が動き出す。頭をぐぐぐともたげ、背伸びをし始める。一つひとつ、分からなったことが分かってくる。そして最後に、「あっ、もしかして…」と思った瞬間、背中を丸めていたはずの<疑問符>が、ポンと大きく背伸びし、<感嘆符>に変わるのだ。
「ああ、そうか!」と。


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2014年12月15日更新
『?(疑問符)が!(感嘆符)に変わるとき―新聞記者、ワクワクする』 小国綾子

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