子供の頃親しんだ、懐かしの「モモちゃん」シリーズ。
何度も読んでいるはずなのに、今あらためて読み直すとはじめて読む物語のような気がします。
そして驚きます。こんなに現実的なおはなしだったのかと。

20代以上の人にも読んで欲しいと講談社文庫から刊行になった「モモちゃん」シリーズ全3巻。
表紙、挿絵は酒井駒子さん。
児童書の、人形の表紙や菊池貞雄さんの挿絵のイメージが強く残っていましたが、
まったく違和感を感じない、モモちゃんとしか思えないモモちゃんです。

大人にむけて差し出された「モモちゃん」の世界は、昔となにも変わっていないはずなのに
そこに書かれていたことは、すべてほんとうの世界のことだったのだとわかります。
子どもの目からみた世界のすべて、そして子どもにはどうすることもできない大人たちの現実が
直截的な言葉はつかわずに、でもはっきりと書かれていたのでした。
2巻目の靴だけが帰ってくるようになったパパの話や育つ木と歩く木の話は、夫婦の別れを。
3巻目では、パパがいないという現実を受け止めなくてはならないアカネちゃんを。
出会いや別れや、いやなものやこわいもの。わからないものも理解できないなりの受け止め方をして、そうして少しずつおとなになっていくこどもが見ている世界なのです。

こどもだった私は、そんなことは全く考えず「モモちゃん」の世界を一緒に遊びました。
おとなになった私は、もう少し、感じるだけでなく考えるように読みました。
どちらがよいどちらが足りないということでなく、そんなふうに年月を経て、その時々の自分がその時なりの読み方で同じ物語を楽しめることがうれしいと思うのです。
かたちある本として本棚に置き続けたい、そんな本です。


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2013年2月17日更新
『ちいさいモモちゃん』 松谷みよ子

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