出会ったのは19歳のとき、図書館で。
たくさんの本の背が並ぶなか、なぜか目が留まって手にしたのでした。
そのころから物語を読むことは好きだったけれど詩には馴染みがなくて
わたしにとって詩が近しい存在になったきっかけの詩集。

きみはいつおとなになったんだろう、という言葉からはじまる「あのときかもしれない」という名の散文詩がとても心に残り、いまでもときおり本を開きます。
おとなになったかもしれないあのとき、を積み重ねていくその言葉は少しセンチメンタルで、でも感情に寄り掛かり過ぎない眼差しがあって、10代の終わりのそのときの自分にぴたりと添うところがあったのだろうと思うのです。
そうして特別になったこの本は今も、読み返せば心が凪いでくるような気がします。

わたしは本を人に贈ったりおすすめすることが好きですが、その反面、誰にすすめられなくても必要な言葉ならどこかで自然に出会うだろうし、それがいちばんいい出会いだなあとも思うのです。
そのときの自分に必要な本はなにか目に見えぬサインを発してくれているような気がする。
そんな力を感じさせてくれた、大切な本。


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2013年3月14日更新
『深呼吸の必要』 長田弘