lemonyomumon

本を読むって、とっても個人的なこと。
あらためてそれを感じる、読書体験を描いたコミックエッセイです。
ブックガイドとしての一面もある本と思うけれど、本をたくさん詳しく紹介しているわけではないので、それを目的に手にするとがっかりしてしまう人もいるかもしれない。

この著者のはるな檸檬さんは、今は宝塚についてのマンガ『ZUCCA×ZUCA』を書いたりしている人で、本ばっかり読んでいる学生時代を過ごしていました。
ハマった作家さんは、ロアルド・ダール、高楼方子、星新一、山田詠美、吉本ばなな、村上龍…などなど。
読みながら、わたしもはまったな〜!という作家さんもあれば、あんまり・・・という作家さんもいました。
その部分の共感も、あればより楽しめると思いますが、この本の面白さはそれよりも、はるな檸檬さんが本を読んでどんなことを感じていたのか、何がよくってその作家にはまりこんでいったのかという、とっても個人的な部分。「自分」にとってその物語がどんなものだったのかということを、飾らないでみせてくれるところです。

ためになる良きものとして扱われたりもする本ですが、どんなふうに良いものなのかは人によって違います。
本好きなひとでも、本を読む理由はきっとみんな違う。
知らない何かを知りたくて。共感したくて。足りない何かを埋めたくて。つらい現実を忘れたくて。読んでる自分がかっこいい気がして。ただ好きだから。楽しいから。一言にしようと思うと気持ちがはみ出して難しい、個人的でもやもやしている部分を、はるな檸檬さんはたんねんに描いていきます。
むさぼるように本を読んだことのあるひとは、書かれている著者の気持ちが自分とは違っていたとしても、そのとき本を読むことが必要だった自分を投影してしまうのではないかな。

この著者は以前は活字中毒といえるほど本を読んでいたけれど、いまはそんなに読まない、必要としてない。それがまた、いいと思います。
本(特にフィクション)は、別に読まなきゃいけないものではなくて、でも喉が渇ききったときに水が身体を潤してくれるように、必要なものを与えてくれるときがある。その時期は人によって違うし、そのとき得るものもいつまでも残るものも違う。とても個人的な体験だと思うから。
本を読む楽しさ、出会うタイミングの面白さを、こんなに素直にあらわしている読書エッセイは、なかなかないです。


pigeon bookstock RSS2.0 Feed on Feedburner


2014年10月13日更新
『れもん、よむもん!』 はるな檸檬

エッセイ コミック ブックガイド