太宰治は好きな作家ですけれども
これは数々の有名作をおさえて、傑作だ!と思っている短編集。
女性の独白の物語を集めたもので、どれもいいのですが…。
表題作の「女生徒」はまた際立っています。

ある一人の女生徒の朝から夜までのお話。
日常の生活の中で、何の脈絡もないように生まれては消えていく感情。
その一瞬には確かにあるのに、あったことをちゃんと知っているのに、
いつのまにか流れて見えなくなるものが書かれている。

私はお米を研ぐのが好きなのですが
さりさりとお米を撫ぜながら水を流していると
どんどん心がまっしろになっていって
でも何かぼんやりと考えています。
すごく大事なとことがわかった気がするのに
あらためて振り返ってみても思い出せない…。

そんなふうに一瞬一瞬にたどり着いている透明でかたちないものを
文章で書ききっているのです。

他の作品とはちょっと違う雰囲気があるので
太宰はいまいち…と思っていた人も手にとってもらいたいです。


pigeon bookstock RSS2.0 Feed on Feedburner


2013年2月3日更新
『女生徒』 太宰治

日本の物語