読む前から少し、身構えていました。
「虐待」をテーマにした物語であるということ。
ニュースで児童虐待のことが報じられたりしたときに心に浮かぶのは、純粋な怒りと一緒に、そこに至るまでに追い詰められた精神への想像。自分のいる世界から地続きで、誰でもそんなふうになりえるかもしれない息苦しさのようなものを感じて苦しくなる。
本来なら「絶対に許せない」ことへ生まれる静かな共感は、正直座りがわるいし、親にもなっていない自分の心の立ち位置がゆらゆらして定まらなくて、物語を読んでいても苦しくなってしまう。
辛いかもしれない、と思いながらもその存在感に惹きつけられて読んだこの本は、想像していたより穏やかな物語でした。
虐待それ自体を事件的にクローズアップしたというよりは、当事者やその周辺にいる人たちの日常。
「たたかれるのはじぶんがわるい子だから」という子供や、自分をとめられない親や、なすすべをもたない教師も、一時的なシェルターにしかなれないともだちのことも、しずかに訥々と語られて、だからこそ目をそらすこともできないまま心に残る。
この物語はそこでおきているすべてのことを否定しない。解決もしない。正義を叫んで握りしめた拳ではなく、抱きしめるために開かれた手のひらのように、ただあるがままをやさしい言葉でえがいて、その先の未来を生きる人の力を信じて照らす。
タイトルの「きみはいい子」という言葉に込められた願いが、この物語のすべてなのだろう。
こどもたちだけではなく、すべてのひとたちへ届くようにと。
2013年1月27日更新
『きみはいい子』 中脇初枝
こどもの世界 学校 家族 日本の物語
ポプラ社中脇初枝希望虐待
ただいま 54 ストック!
こんにちは、鳩です。
食べること寝ることに並んで本を読むことが大好きで、ついにはお仕事まで本に関わることをしています。ここはわたしが読んだ本ばかりの個人的な書庫でもありますが、あなたにおすすめしたい本を差し出す本屋さんのカウンターでもあります。読んで好きになった本、印象に残った本、私はあまりなじめなかったけれどおすすめしたい誰かの顔が浮かんだような本を集めています。記事から記事へキーワードをたどってめぐることもできますし、表示される記事やキーワードもそのときにより変化します。気になる言葉や名前などを各記事下の検索欄で探していただくこともできます。
いまはまだ少ないこの書庫の蔵書も、うっそうとした本の森にそだつ予定です。どうぞ気ままにお散歩して、本と出会ってくださいな。
副読本
エッセイ
家族
恋と愛のはなし
受賞作
歴史を知る
新書
日本の物語
ほんとうの話
仕事場
女
本のおしごと
音楽
震災後
歴史小説
児童書
児童文学
詩
学校
食べる
知識と実践
酔う
文章読本
どうぶつ
ブックガイド
こどもの世界
海外の物語
絵本
フェア帯
コミック
ファンタジー
本屋
塚本やすし
偕成社
食育
夜
あすなろ書房
集英社
荒井良二
喪失
絵本大賞
角川GP
岸本佐知子
シヴォーン・ダウド
漢方
浅草
大修館書店
言葉
朝日新聞出版
ラジオ
芳文社
パトリック・ネス
リズム
貪欲
苦楽堂
戦争
筑摩書房
お菓子
中島たい子
科学
白水社
赤木かん子
挿絵
直木賞
図書館
翻訳
瀬名秀明
講談社
朝
汐文社
産経児童出版文化賞
川上弘美
冒険
飯塚有紀子
中央公論新社
虐待
発見
自転車
文藝春秋
木内昇
小国綾子
徳間書店
ポプラ社
新聞
レシピ
希望
こやまけいこ
東京
新潮社
妄想
イギリス
http://pigeon-book.com/