魔法といったら、どんなものをイメージしますか。
この物語の舞台は世界中の魔術師が集まる町マジェイア。
この魔術師とはいわゆる手品師のこと。マジェイアは、魔術師たちが外で働くときは見る人を驚き楽しませるためにまるで超自然な能力がそなわっているようにふるまい、その秘密が外にもれないように仲間たちで集まって暮らしている町です。
その町で開かれる魔術師名匠組合にはいるための選考会に、アダムという男性が訪れるところから物語がはじまります。
アダムは「ただのアダム」と名乗り、使う魔術を「ただの魔法、正直な魔術」といい、町で魔術師のおちこぼれの女の子ジェインを助手にして、選考会に乗り込みます。まるでタネがないように見えるアダムの魔術をマジェイアの魔術師たちは恐れ、その正体を暴き魔術を妨害してやろうと企むのですが・・・。
人間たちの自分たちを脅かすかもしれない理解できないものに対する抵抗を実に皮肉とユーモアたっぷりに書きながらも、最後まで読むと受け入れられたような気持ちになるのがポール・ギャリコの小説らしいところです。ほんものの魔法とつくられた魔術の争いではあるのですが、本来それはぶつかり合うようなものではなく、お互いがあるからこそ在るという肯定があるうえでのあたたかい風刺。
アダムが落ちこぼれだったジェインに「きみの魔法」を教えてくれる場面が、わたしはとても好きです。
芋虫が蛹になるように、種が芽吹くように、ごくごくあたりまえに人の力の及ばない不思議が身の回りにはある。そのことを文章でありながらまるで目の前に映像が浮かび上がるように描いていて、それまで白黒だった景色に鮮やかな色がつくように世界が素晴らしく美しく思えてくる。もともとそこにある、あたりまえの魔法に気付くための、鍵のような物語なのです。
2013年3月27日更新
『ほんものの魔法使』 ポール・ギャリコ
ただいま 54 ストック!
こんにちは、鳩です。
食べること寝ることに並んで本を読むことが大好きで、ついにはお仕事まで本に関わることをしています。ここはわたしが読んだ本ばかりの個人的な書庫でもありますが、あなたにおすすめしたい本を差し出す本屋さんのカウンターでもあります。読んで好きになった本、印象に残った本、私はあまりなじめなかったけれどおすすめしたい誰かの顔が浮かんだような本を集めています。記事から記事へキーワードをたどってめぐることもできますし、表示される記事やキーワードもそのときにより変化します。気になる言葉や名前などを各記事下の検索欄で探していただくこともできます。
いまはまだ少ないこの書庫の蔵書も、うっそうとした本の森にそだつ予定です。どうぞ気ままにお散歩して、本と出会ってくださいな。
学校 こどもの世界 ブックガイド 音楽 日本の物語 児童書 新書 歴史小説 海外の物語 児童文学 フェア帯 ほんとうの話 ファンタジー 酔う 歴史を知る 副読本 コミック エッセイ 家族 震災後 仕事場 食べる 本のおしごと 恋と愛のはなし 女 受賞作 文章読本 どうぶつ 知識と実践 詩 絵本
直木賞 絵本大賞 発見 川上弘美 小国綾子 飯塚有紀子 ポプラ社 文藝春秋 産経児童出版文化賞 言葉 中央公論新社 お菓子 瀬名秀明 角川GP 戦争 希望 筑摩書房 漢方 貪欲 汐文社 朝 東京 白水社 新聞 翻訳 あすなろ書房 本屋 大修館書店 講談社 自転車 徳間書店 イギリス 苦楽堂 こやまけいこ 冒険 ラジオ 浅草 パトリック・ネス 朝日新聞出版 妄想 喪失 木内昇 芳文社 赤木かん子 図書館 塚本やすし シヴォーン・ダウド 新潮社 岸本佐知子 科学 レシピ リズム 食育 夜 中島たい子 荒井良二 集英社 虐待 挿絵 偕成社
http://pigeon-book.com/