1日は24時間。
もうちょっと時間が増えたら、と思うことはないですか?
これはそんな「おまけの時間」を体験する男の子のおはなし。

主人公の賢は、とくにとりたてて特技もない、ちょっとぼんやりな小学生の男の子。
授業中、お昼のサイレンのなるときに、突然不思議な夢を見るのです。
教室の中で茨に囲まれて動けない。そしてもう一度サイレンが鳴ると終わってしまう夢。
毎日同じ時間に繰り返すその夢を楽しむために、賢は茨を切ってみることにします。
自由になった賢が見たのは、同じように茨に囲まれて眠る同級生たち。茨だらけの学校。
驚いたことに、茨を切ると、次の夢からその人も目を覚ますことが分かります。
不気味な世界の「おまけの時間」をもっと楽しいものにするために
現実とはちょっと性格の違う同級生たちと一緒に学校中の茨を切ってしまうことにするのですが…。

この作品はストーリー自体はとても地味です。
心躍るような冒険があるわけではないし魔法もない。
知恵を絞って計画を立て、増えていく「おまけの時間」の仲間に状況を説明して
みんなで力を合わせてちゃくちゃくと茨を切る。ただそれだけ。
でもただそれだけのことにみんなが熱中していくその過程が
空を飛ぶよりも魅力的な時間に思えてくるのです。

「茨を切る」というのはとても象徴的で、そこからいろんなものを読み取ることはできると思うのだけど、
この物語で著者が書こうとしているのは、そんな警告や教訓ではないのです。
ただみんなで茨を切ることの楽しさを書いてる。だから面白い。

そして著者の意思を伝えるための論文ではなくて、楽しむための物語を書き上げたその作者の、心を伝える短いあとがきが、私はとても好きです。
あまりに好きなので少しだけ抜粋したいと思ったのですが、一部分だけ抜き出すとそこに含まれる意味が変わってしまうような気がするし、物語を読んでから読むから伝わるものがあるのだろうと思い直しました。

読む人によって、いろんな読み方ができる物語だと思います。
仕事に悩む大人にも、じつはおすすめです。


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2013年2月13日更新
『ようこそ、おまけの時間に』 岡田淳

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